message メッセージ
Self Liner Notes『病める時も健やかなる時も』
2015.06.07
新しいCDを制作するに当たり、
これまで度々ライヴで演っていながら、
まだ正式には音源化してなかった曲、
というのを、ざっと挙げてみたところ、
かなりの取っ散らかりぶりだった。
でも、そんな様子も含めて“私”であり、
それらを一つにまとめる言葉として、
このタイトルが過ってくれた。
2006年に刊行した書籍
『時は世紀末、僕は未成年』には、
こんなクダリがある。
コイツ(=私)は、
「将来」という二文字に、胸が高鳴った。
とにかくこれ(=表現活動)は、
このまま続ける価値が
ありそうなものだと思えたのだ。
健やかなる時も、病める時も。
それは、中2の頃、当時の音楽教師が、
私のオリジナル曲を聴いて驚き、
「将来はシンガーソングライターになるの?」
とのコメントをくれた時の心境だが、
こうして実際に続けてきた今、
その価値はある、と断言できる自分がいる。
1. ポインセチア
Xmasシーズンによく見かける、赤と緑のあれ。
実は南国の植物で、寒さが苦手らしい。
誰の目にも成功してるように映る人だって、
それなりの苦悩を抱えてるもんで。
この詩は、もがきつつも輝いてた友人の心情を、
汲み取るようにして書き上げた。
最初にGuitarのリフが出来て、
そこからメロディーなどを膨らませて行った、
私にしては珍しい作り方だったけど、
サビ裏のViolinパートとか、
我ながら、よくこんなの閃いたな、と思う。
2. ざまあみろ
これはもう、私にとって“お家芸”みたいな部類。
こう、思ってても口にしがたい気持ちほど、
作品に込めたくなってしまうタチで。
ちょっとしたムカつきは、恰好の餌食になる。
笑い飛ばすんじゃなく、歌い飛ばすような感覚。
Violinの音色との相性が抜群で、
レコーディング当日、スタジオ使えるのあと5分!
という時に閃いたフレーズも採用してたりする。
Chorusは、中山幸さんのアイディア。お見事。
3. cloudy days
良いメロディーが浮かばず困りだしていた頃、
「曲なんていくらでも書ける!」と豪語してた
吉田あきら氏に、いくつかラフ音源を送ってもらい、
Gt.と鼻歌だけで半ベソかかされたのがこれ。
そのメロディーが持つイントネーションに
ガシッとハマる言葉を探しながら書いた詩だけど、
今作にもピッタリな内容。
心も空と同じで、晴れやかでばかりはいられない。
どうにも湿っぽくなりやすい時期だってある。
“いつかは終わる”という歌い出しは、
“終わってしまう”というニュアンスから、
“終わってくれる”というニュアンスへと変わる。
4. Swing Spring
今作の中で唯一、軽やかで緩やかな趣の曲。
やや乙女チックな印象も与えておきながら、
誓い合いたくない、縛り合いたくない、だの、
二人で居たい、今夜“は”居たい、だの、
結婚願望のなさを強調するような発言だらけ。
(“アナタ”を“オマエ”、“ワタシ”を“オイラ”に替えると、
とたんにズルい奴に見えてくる)
バックに流れてる環境音は、うららかな春、
近所の神社へ行き、iPhoneのボイスメモ機能で、
曲の長さ分、一発録り。
これが、仕組んだような絶妙なタイミングで、
小鳥がさえずり、カラスが鳴き、
風が吹き、葉っぱが落ち、飛行機が飛び…。
もしや神様の仕業?と思わされた。
5. リバーシブル
巷で“応援歌”と呼ばれている大半の曲に、
全くと言っていいほど励まされない自分がいて。
じゃぁ、テメエでテメエを勇気づけてやろう、
と、2007年に書いたのがこれ。
理想より現実、建前より本音と向き合って、
それでもこの世界、その相手を愛せるだろうか?
表裏兼用でありたい、何かをひっくり返したい、
そんな問い掛けや願望は、今作に限らず、
私の作品全般の核となる位置にある気がする。
元々は8ビートで縦ノリの曲だったけど、
アコースティック編成で映えるリズムに変更。
6. dying message
何か壊れる度、何か失う度に、何か教わる。
それを忘れた頃に、また壊れる。失う。
ちょっと俯瞰して見ると、コントみたいな日常。
私の作品の多くが、やたらと語呂がいいのは、
悲しみや怒りも楽しみたいから、かもしれない。
1,2,5曲目と同様、メトロノームを使わず録音。
Bassも入れてこそ格好が付く曲だけど、
GuitarとDrumsだけのスリリングな演奏の中、
颯爽と駆け抜けて行くような歌唱は、
数年前の自分にはできなかったんじゃないかと。
7. 音信
一連の一人旅を始めた2006年に生まれ、
以降、最も多くの場所で歌ってきたであろう曲。
タイトルには、“音楽の力を信頼する”
という意味も込められている。
今や“あなた”とは、耳を傾けてくれる皆さんのこと。
最後の最後には、あえて私の声じゃなく、
ドリーム・フィールドのユウミちゃんの声を残した。
天使のような、希望の象徴のような、彼女の声。
それは、ひとりぼっちの夜道で作詩や作曲をしだした、
7歳の頃の私、言わば原点へと連れ戻してくれる。
決して完璧だとは言えない。
でも、現時点での自らの技量や“縁”の数々を
最大限に活かした、と言える今作。
アナログ感を尊重した結果、
市販の他のCDと比べると、音量は小さめ。
(普段より少し上げて聴くと丁度いいはず)
ケースも、プラスチックじゃなく、紙を使用。
(こじ開けると破けちゃうので要注意)
アートワークには、終わりと始まり、意志と覚悟、
聖域、といったイメージをちりばめてもらった。
私は、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
病める時も健やかなる時も、
表現衝動と共に歩み、添い遂げたい。
この心を鳴らし、その心に響かせることが、
何よりも幸せだと気が付いた。